業務委託契約で開発を行い報酬を得る在宅プログラマは、税制上は事業所得を得る「個人事業者(自営業者)」です。個人事業者は、自分で収入と経費を計算して所得を算出し、その所得と納税額を確定申告で税務署に届け出る必要があります。 未調整の課税対象となる所得があれば確定申告が必要確定申告の義務と税務署に開業届(個人事業の開廃業届出書)を出しているかどうかは関係ないので、注意してください。個人事業者として開業届を出していなくても、ソフト開発の受託などで申告すべき所得があれば、確定申告を行う必要があります。 報酬の支払い時には所得税が源泉徴収されていることもありますが、源泉徴収はあくまでも仮払いです。受け取った報酬がすべて源泉徴収済みであっても社会保険の基準額を確定したり最終的な経費と税額を精算するため、「確定申告」が必要になります。 一つの企業に給与を得る形で勤務し、他の収入もないのであれば企業の方で税務関連の事務を行ってくれるので確定申告は不要ですが、「自分の事業」を行う場合は税金についてもしっかり確認しないといけませんね。 もっとも、税金の計算に必要な「資料の整理」「計算」は在宅プログラマの最も得意とする分野。効率的な納税システム開発を楽しむのも良いでしょう。うまくすれば、新しい「事業」につながるかも? 申告書は、確定申告書等作成コーナーで自動計算して印刷できる確定申告では、申告年度に受け取った収入から各種控除や経費を差し引いて課税対象所得を確定し、納税額を算出します。もっとも確定申告書等作成コーナーを使えば、収入額や税額が自動計算されますから特に難しいことはないでしょう。 確定申告書等作成コーナーで必要事項を入力すると、納税額(還付額)が記入された申告書がPDFとして保存できるようになるので、後はそのPDFを自宅のプリンタやコンビニプリントで印刷して郵送します。 続いて、算出した納税額を納付します。金融機関においてある納付書に記入し現金で納付する、クレジットカードや口座引き落としで送金する、といった方法がありますので、都合の良いやり方で納めましょう。期限を過ぎると税務署から延滞税などの追徴措置を受ける可能性もありますから、納付期限には要注意です。 源泉徴収額が納税額を上回っていた場合は、「納めすぎた税金を返還してもらう」還付申告になります。この場合は、確定申告書に振込先の口座を記入して待つだけです。大体1ヶ月程度で振り込まれるでしょう。 課税対象から除ける経費の按分が焦点に自営業者の確定申告において最大の焦点は、「経費」です。経費は収入を得るのに要した費用で、収入から経費を引いた「実際の稼ぎ(所得)」を課税対象とするのが、所得税/住民税の基本的な考え方になっています。経費が多いほど、課税対象所得(=税金)が減額されるわけですね。 日頃から領収書(レシート)は場所を決めて保管する、お金の出入りは簡単なもので良いので「記帳」しておくことが大切です(2014年以降、白色申告でも帳簿の記帳と保管が義務化されています)。 在宅プログラマであれば、「書籍や講座の受講など仕事で使う技術の習得に要した費用」「打ちあわせの交通費」などがすぐに経費として思い浮かぶことでしょう。もちろん「仕事で使うパソコンの取得費やネット接続料」も経費になります。賃貸住宅に居住する在宅プログラマであれば、家賃も経費です。 ただし、これらの経費は「実際に支払った費用のすべて」を算入できるとは限りません。税金における経費はあくまで「収入を得るために要した費用」なので、「他の目的でも」使うものに関する費用は、実際に収入を得るために使用した部分を「按分」して算出する必要があるのです。 多くの在宅プログラマにとって「支出額」が最も多い経費は、家賃でしょう。年数十万円以上に上る家賃のうちどのくらいを「事業に使った分」として按分(個人で使う家事消費分と分離)し、経費にするか。按分の仕方次第で、税金はもちろん社会保険料の額にもそれなりの影響が出てきます。 実は、経費の按分については明確な基準はありません。「実際に事業に使っている分」を自ら算出し、計上できます。家賃であれば「仕事に使う部屋」が明確に分離されているのなら、借りている住居の面積のうちその部屋の面積がどれだけを占めているか、で算出することができるでしょう。また、日常生活(家事消費分)と物理的に分離できない場合は、「仕事をする時間」を元に収入に対する「寄与部分」を算出してみる手もあります。 所得を得るのに要した経費と家事消費分との按分で重要なのは、「無理のない説明」ができる形で按分することです。たとえば、週に数時間の在宅勤務で得た事業所得の経費として「支払った家賃の半分以上」を計上するのは、さすがに無理がありますね。 無理がある、家賃と所得の実態からしてあまりに不自然な経費を申告すると税務署から「お尋ね」が来る場合もあります。お尋ねの対応は、時間はもちろん精神的にも負担になるので避けたいところですよね。 |